2021最新 上田綺世 柳沢敦

特に後続の選手にまで影響を与えた印象の強いFWとしては、マジーニョ(1995〜2000年に在籍)とマルキーニョス(2007〜2010年に在籍)の両ブラジル人が挙げられる。特にJリーグの多くのクラブに在籍し、鹿島が来日7年目で5チーム目だったマルキーニョスの影響は、共にプレーした当時の若手であった興梠や田代、大迫にまで強烈な影響を与えている。

ただ、彼自身も強調した通り、メンバー入りは金メダルへの挑戦のスタートに過ぎない。日本は7月22日の南アフリカ戦を皮切りに、中2日でメキシコ、フランスと対峙する。1次ラウンドを勝ち上がっても強豪を倒し続けなければ頂点に立てない。守備陣は吉田麻也を筆頭にオーバーエージ(OA)と冨安健洋ら海外組で固めているから安定するだろうが、前線のアタッカー陣が点を取らなければ勝てない。上田は日頃から「FWは点を取ってチームを勝たせるのが仕事」と口癖のように言い続けているが、それを実行しなければ、偉業達成はあり得ないのだ。

「残り5試合の中で『勝てばJ1優勝』という状況で逃したのは、間違いなく得点力不足が関わっていると思うんです。毎試合3点ずつ取れていたら絶対優勝できていた。そういうところで点を取れる選手に成長したいなと、僕は今、強く思っています」。実質的なルーキーイヤー開幕を目前にした2020年2月、彼は目をぎらつかせていた。

「柳沢はみんなで点を取ろうとする選手で、周りを使うのも上手い。(興梠)慎三はまた違う(タイプ)。点を取ることに関しては大迫に似ている。一番FWとして大事なことですよね。ヨーロッパに行けば、点を取らないと評価してくれないですから」

鹿島入り後を改めて振り返ってみると、最初の半年間はプロの壁に直面。思うような仕事ができずに苦しんだ。チームもJ1リーグ3位に終わり、2020年元日の天皇杯決勝ではヴィッセル神戸に惜敗。無冠に終わった。

度重なる困難を乗り越え、夢舞台を引き寄せるには、目に見える結果を出すしかない。5月から鹿島で先発に戻った上田は6月のU-24代表にも復帰。最終アピールの場となった12日のジャマイカ戦(豊田)で華麗なループシュートを決め、底力を見せつけた。「いざという時に点の取れる存在」であることを実証した22歳のFWは森保監督の信頼をガッチリとつかみ、ついに18人の座を射止めた。

J1鹿島アントラーズに2021年からの加入が内定した法政大FW上田綺世が20日、記者会見を行った。鹿島の椎本邦一スカウト担当部長は東京オリンピック世代のエース、次世代の日本代表エースとしての期待が懸かる逸材を「即戦力」と評し、「点を取ることに関しては大迫に似ている」と現在の日本代表でエースを担うクラブOBのFW大迫勇也(ブレーメン)の名前を挙げた。

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また、鹿島だけに限らず日本人のFW選手に「誰をFWとして参考にしていますか?」との問いで最も名前が上がる柳沢は、「マジーニョから受けた影響が強い」と語る。地味ながらもFWがチーム全体を助けるキープ力や攻撃の起点となる動き出しの数々は、マジーニョから伝統的に伝わる「鹿島産FWの流儀」になっている。

鹿島の日本人FWは日本代表の主力に抜擢されるケースが多い。しかし、J1で2桁ゴールを記録した回数は、柳沢敦(現鹿島ユース監督)が2回(後に京都サンガ時代に1回)、大迫勇也(現ブレーメン・ドイツ)も1回である。2002年の日韓W杯の開幕戦でベルギー相手に貴重なゴールを決めた鈴木隆行氏にいたっては、キャリアを通してJ1通算17得点のみに終わっている。

6月の最終候補合宿で前田、林大地、田川亨介を含む4人が呼ばれたFW陣は大激戦と言われた。2017年12月のチーム発足当初からコンスタントに招集され、2019年にはA代表の一員としてコパ・アメリカ(ブラジル)やEAFF E-1選手権(釜山)にも参戦した上田は当時から「絶対的エースFW候補」と位置付けられていた。しかしながら、2019年夏に法政大学サッカー部を退部し、鹿島アントラーズ入りしてからは、必ずしもすべてが順風満帆というわけにはいかなかった。それだけに、危機感は強かったに違いない。

五輪メンバー選出会見でも普段通りの淡々とした口ぶりで自身のやるべきことを語った上田。思考のストライカーはどんな時も冷静沈着に物事を客観視できるのだ。鋼のメンタルは特別な重圧のかかる自国開催の五輪を戦い抜くうえで必要不可欠。22歳とは思えない落ち着きを備えた彼ならば、修羅場を潜り抜けられるはず。今から期待は高まる一方だ。

上田自身も「高さ、速さ、シュートを打てるといった細かい特長はあると思いますけど」と前置きしたうえで、「それらは点を取る僕の武器。ゴールに対する姿勢・嗅覚は負けたくない」と自負を覗かせる。

鹿島の椎本スカウト担当部長は、鹿島学園高時代も「点を取るFWだな」と見ていたというが、具体的に「欲しい」と思ったのは大学に入ってからだと明かす。大学進学で体ができ上がってきたのに加え、一番高く評価する点は「得点へのこだわり」だ。鹿島には代々、FW柳沢敦、FW興梠慎三(現・浦和レッズ)、FW大迫ら頼れるストライカーが君臨してきたが、上田の得点嗅覚は大迫に通ずるものがあるという。

「アルシンド&黒崎久志(長谷川祥之)」「マジーニョ&柳沢」「柳沢&鈴木」「マルキーニョス&興梠慎三(田代有三)」「金崎夢生(現・名古屋グランパス)&土居聖真」は、クラブの歴史に残る2トップだ。