2021最新 上田綺世 海外

6月22日、東京五輪日本代表メンバー発表会見が行われた。壇上の森保一監督は、GK大迫敬介を皮切りに1人1人名前を読み上げていく。17人目の前田大然が終わり、ラストの18番目に呼ばれたのが、上田綺世だった。

鹿島入り後を改めて振り返ってみると、最初の半年間はプロの壁に直面。思うような仕事ができずに苦しんだ。チームもJ1リーグ3位に終わり、2020年元日の天皇杯決勝ではヴィッセル神戸に惜敗。無冠に終わった。

ただ、彼自身も強調した通り、メンバー入りは金メダルへの挑戦のスタートに過ぎない。日本は7月22日の南アフリカ戦を皮切りに、中2日でメキシコ、フランスと対峙する。1次ラウンドを勝ち上がっても強豪を倒し続けなければ頂点に立てない。守備陣は吉田麻也を筆頭にオーバーエージ(OA)と冨安健洋ら海外組で固めているから安定するだろうが、前線のアタッカー陣が点を取らなければ勝てない。上田は日頃から「FWは点を取ってチームを勝たせるのが仕事」と口癖のように言い続けているが、それを実行しなければ、偉業達成はあり得ないのだ。

「残り5試合の中で『勝てばJ1優勝』という状況で逃したのは、間違いなく得点力不足が関わっていると思うんです。毎試合3点ずつ取れていたら絶対優勝できていた。そういうところで点を取れる選手に成長したいなと、僕は今、強く思っています」。実質的なルーキーイヤー開幕を目前にした2020年2月、彼は目をぎらつかせていた。

「状態が上がってきてケガという連続。ケガをしないこともいい選手の条件だと思う」と本人も悔しさを味わい続けた。3月のU-24日本代表活動を棒に振り、4月には自身を重用してくれたザーゴ監督が解任されるといったアクシデントも発生。さすがの上田も東京五輪が遠のく感覚を覚えたこともあっただろう。

ラストの一美は完全なターゲットマンタイプのFW。最前線で相手を背負ってボールを落としたり、自らシュートに持ち込んだりできる選手だ。もちろん今どきの選手だけにハードワークや守備意識も非常に高い。巻誠一郎を輩出した熊本・大津高校出身で、献身性やフォア・ザ・チーム精神も強い。そこは2006年ドイツワールドカップにサプライズ選出された偉大な先輩にも通じるところがある。

仮に浅野雄也が東京五輪の大舞台に立てば、2016年リオデジャネイロ五輪に参戦した拓磨とともに初の兄弟五輪出場を達成できる。そうなれば名誉なこと。快足FW前田大然の存在は大きいが、今季J1での32試合5得点という数字では上回っている。その勝負強さをこの合宿で存分に発揮したいところ。23日午前練習では森保監督からも直々に個別指導を受けるほど期待は大きい様子。今回の千載一遇のチャンスを逃す手はない。

日本代表から海外まで幅広くフォローするフリーライター。

2019年6月、ブラジルで開催されたコパ・アメリカに出場したときはまだ法大の3年生だった。日本代表デビューのチリ戦は決定機をことごとく外し、世界との距離を思い知らされた。帰国するや、入団が内定していた鹿島の門を前倒しでたたいた。2年目の昨季はプロの水に慣れ、26試合で10得点をマークした。

6月の最終候補合宿で前田、林大地、田川亨介を含む4人が呼ばれたFW陣は大激戦と言われた。2017年12月のチーム発足当初からコンスタントに招集され、2019年にはA代表の一員としてコパ・アメリカ(ブラジル)やEAFF E-1選手権(釜山)にも参戦した上田は当時から「絶対的エースFW候補」と位置付けられていた。しかしながら、2019年夏に法政大学サッカー部を退部し、鹿島アントラーズ入りしてからは、必ずしもすべてが順風満帆というわけにはいかなかった。それだけに、危機感は強かったに違いない。

こう語気を強めた上田はここから世界へと羽ばたくことを夢見ているはず。かつて「欧州5大リーグで活躍したい」と語ったこともあるだけに、世界のスカウトの度肝を抜くような仕事を見せつけてほしい。

五輪メンバー選出会見でも普段通りの淡々とした口ぶりで自身のやるべきことを語った上田。思考のストライカーはどんな時も冷静沈着に物事を客観視できるのだ。鋼のメンタルは特別な重圧のかかる自国開催の五輪を戦い抜くうえで必要不可欠。22歳とは思えない落ち着きを備えた彼ならば、修羅場を潜り抜けられるはず。今から期待は高まる一方だ。

これで完全復活を果たしたかと思いきや、2021年に入っても負傷との戦いは続き、何度も離脱を繰り返すことになった。

鹿島は今年クラブ創立30周年を迎える。「そんな記念すべき年に戦えることはうれしいし誇りでもある。タイトルを取ることが重要」と上田。就任2年目のザーゴ監督の下、チームの熟成は進み、昨季18得点のエベラウドと上田の2トップも破壊力を増しそう。背番号は昨年の36から半分に減ったけれど、ゴール数は2倍(20点)になってもおかしくない。上田が目標とする優勝も現実味を帯びてくる。

「(2017年12月のチーム発足から)3年半は長かったですね。去年はほとんど活動もなかったですけど、僕は環境や立場、プレースタイルもガラっと変わったので、すごく長かったかなと感じています」と上田はここまでのサバイバルの厳しさを改めて噛み締めた。