「自分にオファーをいただくときは、「藤井組」にオファーをいただいたという認識でいる」と藤井監督は言う。「撮影の今村(圭佑)は大学時代からのつき合いですし、美術の部谷(京子)さんは僕を映画の世界に入れてくれた母のような人(藤井監督は部谷が実行委員長をつとめる映画祭のコンペ部門で受賞歴有)。監督だけが呼ばれても本質的なものは撮れなくて、撮影、照明、録音、美術などメインのチームを固めることで、相手が求めているパフォーマンスを出せるんです」。
今村は今回、時代ごとに映像のテイストを変えた。第一章では手持ち撮影がメインで、フィルムの生っぽさとざらつきを思わせる質感と陰影のコントラストが、かつての香港ノワールのようなムードを醸し出す。第二章では小型クレーンを多用してダイナミックな躍動感と緊張感を作り出し、第三章では一転してFIXの視点から登場人物たちを見つめる。画面サイズも過去パートの第一章と第二章は横長のシネスコ、現代パートの第三章だけ特大のIMAXが選ばれた。『燕Yan』(20)で監督経験もある今村の映像の魅力を、藤井監督はこう語る。「今村の映像には演出が乗っているんです。目には見えない心を撮る力がある。レンズの距離やカメラワークの一つ一つにそれが反映されているんです」。ちなみに今村は市原の初主演作である『リリィ・シュシュのすべて』(01)で撮影を担当した故・篠田昇に影響を受けたことを公言している。
撮影現場では、本番のカットがかかった後に、綾野と藤井監督が並んでモニターをチェックする姿が日常となっていた。自らが主演としてカメラの前に立ちながら、カメラの内外で全体に目を配る。それは並みの体力・精神力でできることではない。「綾野さんは自分がどう映っているかを気にしているのではなく、共演相手がやりづらい思いをしていないか、照明の位置までも把握した上で演じているんです」(藤井監督)。
家族は時代も国境も超える。日本映画というジャンルにとらわれず「アジア映画を作ったつもり」と綾野が自負する『ヤクザと家族TheFamily』は、きっと世界を分断から救う力になれるはずだ。
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杉咲は病気によって若くして命を落とす渡辺サクラを体現し、ドラマ「中学聖日記」で注目を浴びた岡田は太郎と深く関わっていく青年・あゆむ役で銀幕デビューを果たす。そのほか、小澤が弥生と結婚するがある事故に巻き込まれる白井卓磨、黒木が太郎の母・真理亜に扮し、脇を固める。
反社会勢力時代のヤクザをこんなに切なく描くとは!
家族との葛藤を綾野剛が歳を重ねながら熱演し、組長・舘ひろしのなんたる存在感、哀愁。
北村有起哉、市原隼人、役者が皆光る令和版ゴッドファーザー。
そして、何よりも個人的には脚本の完成度の高さが随一のドラマだと思っています。「ご都合主義だなぁ」と思わせる展開が皆無で、どのエピソードも自然に受け入れられるし、共感できる…。しかも、随所にドラマが盛り上がるトラブルやイベントが違和感なく巻き起こり、初回から最終回までまったく飽きることなく楽しめます。さらに、このドラマの凄い部分は「結婚したら家事は無償でやることが当たり前だ」と思っていた世の女性たちの固定概念を打ち砕いたところ。専業主婦だけでなく、兼業主婦たちにも新たな価値観を提示したのではないでしょうか。また「友達でしょ」「ちょっとくらい手伝ってよ」「良い経験になるよ」など、優しさや好意・弱みにつけ込んで人の労働力を無償で利用とする人に「それは"やりがいの搾取"だ!」と言い切るみくりにも、大きな感銘を受けました…!老若男女楽しめる平成を代表する傑作ドラマなので、普段恋愛ドラマを観ない人でも大いに楽しめるはずです。
"不倫"を題材にしているためか、本ドラマの映像は常にどこか暗く、重く、不穏。そんなずっしりとした雰囲気の中で進んでいく2人の関係は、独身の人が観る印象と、結婚している人が観る印象ではまったく違うかもしれません。昔の不倫ドラマでは「不倫でも本当にお互い好きなら結ばれる」というラストが多いですが、このドラマは違います。不倫の代償とはどんなものなのか。その現実をしっかりと視聴者に突きつける後半の怒涛の展開は、ドラマらしからぬリアリティがあって個人的にはそこが高評価でした。さらに、上戸彩さん×斎藤工さんのセクシーでフェロモンたっぷりの演技は見逃せませんよ。切ない悲恋モノが好きな人は観なきゃ損する1本です。
『新聞記者』の撮影が終わり、河村プロデューサーと僕が次に選んだ題材は「新しいヤクザ映画」でした。前作同様、難産ではありましたが、変わりゆく時代の中で排除されていく「ヤクザ」という存在を、抗争という目線からではなく、家族の目線から描いた作品です。綾野剛という唯一無二の俳優とこの作品を一緒に作れたこと、舘ひろしさんをはじめとする素晴らしいキャスト、スタッフと「ヤクザと家族」という映画を作り上げたことを誇りに思います。是非、公開まで楽しみにしていてください。
出演が決まった時、嬉しさと同時に目の前に一枚の壁が立ちはだかった感覚でした。この壁を乗り越えなければならない。そんな燃え上がる思いで挑みました。翼の役と向き合っていく中で、監督はシンクロする瞬間を大事にしていたと思います。役、相手、空気感と。だから毎シーン気が抜けない。でも気持ちのいい緊張感がありました。そして何より綾野剛さんが正面から向き合って下さったことで翼という人間が作れたと思います。映画の世界はこんなにも素敵な場所なんだと肌で感じました。俳優とは?お芝居とは?をもう一度考える機会を頂けた大切な作品です。
1月29日公開の映画「ヤクザと家族 The Family」に、millennium paradeとして主題歌「FAMILIA」を提供した常田。今回の番組には常田のほか、映画の主演を務めた綾野剛、監督の藤井道人が出演し、映画に関するエピソードを語り合う。さらにそれぞれの作品への向き合い方、コロナ禍でのエンタテインメント業界の変化、プライベートに関する話題にも話はおよぶ。
綾野剛なくしてこの映画の誕生はあり得なかった。綾野は藤井監督の『デイアンドナイト』(19)公開時にもコメントを寄せており、「藤井さんとスターサンズチームがヤクザと家族をテーマに作品を作る。直感で参加を決めました。藤井さんは非常にクレバーな監督で、自分に求められていることを的確に把握してそれを形にできる。だからこそ、藤井さんが本当に撮りたい企画で、その才能を最大限に発揮して欲しかったんです」と参加を熱望した。
その言葉通り、綾野は脚本完成前の段階で出演を内諾。執筆中のみならず、撮影稿が出来上がってからも毎日のように藤井監督と言葉を交わし、「山本だったらどうするか」という目線で脚本に命を吹き込んだ。それだけでなく、金髪に真っ白なTHENORTHFACEの上下と白いNIKEのスニーカーという第一章での強烈なスタイルをはじめ、全編を通した山本のビジュアルにも、綾野のイメージした山本像が投影されている。こうした綾野のアプローチには藤井監督も「天才肌に見えるけどめちゃくちゃアスリートですごい努力家」と賛辞を惜しまない。そしてこの山本としての行動原理をふまえた綾野の見解は、作品の結末にも反映されることとなった。
山本にとって父親的存在となる柴咲役は、藤井監督たっての希望で、舘ひろしにオファーを敢行。脚本に惚れ込んだ舘は即これを引き受ける。「舘さんが主演された『免許がない!』(94)が好きだったんです。漢(おとこ)だけど包容力のあるあのニヒルな目を、剛さん演じる山本に送ってくれたらどうなるだろうという期待がありました。柴咲に求めていたのは武闘派の親分ではなく、時代の成り行きでヤクザの親分という職業に就いた、一家の「父」です。今の社会に足りないのは柴咲の温かさではないか……と思っていたのですが、舘さんは脚本からそのことを読み取ってくださっていました」(藤井監督)。柴咲を演じるにあたって、舘ひろしは「『スカーフェイス』(83)のアル・パチーノ」をイメージしていたという。「柴咲は当初、終始穏やかな側面を見せている方向性だったのですが、敵対する加藤(豊原功補)が襲いに来るにはまず彼に恥をかかせなければいけない。そのためにも、柴咲の怖ろしさをうかがわせるカットが欲しいと思ったので、それをいかに見せるか藤井監督と話し合いを重ねながら考えました。僕が今までつき合ってきた監督はほとんどが助監督上がりでした。でもここ何本かは、撮影所育ちではなく最初から自分の作品を撮って世に出てきた監督とやらせていただいている。藤井監督もその一人ですが、撮影現場では若いスタッフたちが何一つ妥協していなくて、久しぶりに骨のあるハードボイルドな作品に出演できたのは嬉しかったですね。」
感情表現が下手で理論的&合理的すぎる"リケジョ"を杏さん、"高等遊民"と自称し実家で引きこもり生活を送るダメ男を長谷川博己さんが演じています。この2人がキャスティングされたことで、ドラマの面白さが際立ったことは間違いありません。初デート・プロポーズ・クリスマス・お正月・結納など結婚へ向けてのイベントをこなしながら、どんどん成長する2人の姿は、ベタかもしれませんが素直に心が揺さぶられます。不器用すぎる2人なので共感ポイントは薄いにせよ、笑って泣けるドラマなので疲れたときに無心で楽しむことができますよ。
河村プロデューサーと話して、主人公の山本という役は綾野剛以外考えられない、という共通の認識でした。20年の役を生きる山本という役は、その時代を象徴するかのように様々な繊細な感情を表現しなければならなかったからです。綾野さんのストイックな役への姿勢は、本作の脚本の世界を何倍にも広げてくれました。柴咲組の組長を演じた舘ひろしさんは、僕のリクエストです。かっこよくて、でも愛嬌もある、優しい「父親像」を舘さんに託しました。舘さんには撮影時本当にたくさんのことを教えていただき、僕の監督人生の大きな財産の一つとなりました。
このドラマは「病気になった女性を献身的に支える」というところがメインではありません。病気なんて関係なく「絶対この人じゃなきゃダメだ…!」という強い気持ちで惹かれ合う2人の恋愛が主軸となっています。病気と聞くと、ついついその闘病生活に目がいきがちですが、本作の感動ポイントはあくまで2人の"純愛"です。ドラマ上でイチャイチャとじゃれ合う姿は、観ているこっちが癒されるほど微笑ましいです。恋の始まりから、結婚、出産、子育てなど、ごくごく普通な男女の人生のステップを進んでいくのと同時に、主人公のアルツハイマーの病気はどんどん進行していき…。サブタイトルにもある通り、大好きな人が自分のことをどんどん忘れてしまう話なので、ラストは切なくて号泣必至。だけど、それまでの過程は心温まるものばかり。 憂いに沈むときに鑑賞すれば、心が洗われるドラマです。
単なるヤクザ映画というわけではなく、色んな家族がある中で、こういった家族の描きかたをするんだなと撮影前から楽しみで、撮影中は心穏やかにいることが出来ました。年の近い若いチームだけれども、チームワークがすごく良くて、藤井監督の人柄なんだろうなと思いました。監督というリーダーと頼れるお兄さんになっていた綾野さんと本当に楽しい現場でした。ぜひ楽しみに待っていてください。
「ヤクザ」という題材で家族の愛を描いた作品(脚本)に、大変興味を持ちました。藤井監督は感情表現を繊細に演出し、俳優スタッフが一つとなり、丁寧に作品を作り上げていきます。その姿勢に感銘を受けました。綾野剛さんは、訴えかける目力が素晴らしい。いつも作品のこと、役柄を深く考えており、役の中をリアルに生きている、そんな俳優さんだと思います。とても刺激をもらいました。『ヤクザと家族 The Family』どうぞ、ご期待ください。