2021最新 松山英樹 3日目

その言葉通り、今年のマスターズは松山英樹が初日から笑顔を見せたり、リラックスしている表情が目立っていた。単独トップで最終日を迎えた朝も早藤キャディ、目澤コーチとともに練習グリーンで談笑しているシーンがあった。実は、この二人もここ数年の“チーム松山”にとって大きな変化だった。専属キャディをつとめる早藤将太は2019年から、そしてプロゴルファーになってから初めて松山がコーチ契約を結んだ目澤コーチとは昨年10月に出会って、今年1月からプロ契約を結んだばかり。しかし、この新しいチーム松山について良い兆しを感じていたのが、かつて松山英樹の専属キャディだった進藤大典だ。進藤は、昨年12月に松山英樹とプライベートでラウンドしたときに驚いたそうだ。
「すごくスイングが良くなっていたので、21年は最低でも2勝できると思うと本人に伝えました。私はスイングの専門家ではありませんが、すごく調子が良さそうで、ロボットのように再現性の高いスイング軌道になっていた。ボールを打つまでのテンポやリズムもすごく良かった。目澤コーチとは毎日やりとりしていると言っていましたが、それも良い方向に進んでいるなと思いました」マスターズ直前に発表された公式サイトの優勝予想でも圏外だった松山だが、チーム松山には勝利の予兆があったのだ。

●解説進藤大典
しんどう・だいすけ/1980年7月3日生まれ。宮里優作、谷原秀人の専属キャディをつとめ、2013年から2018年まで約6年間にわたって松山英樹の専属キャディをつとめた。現在は解説やレポーターだけでなくYouTubeでも活躍。

早藤将太
はやふじ・しょうた/1993年10月7日生まれ。松山英樹の2学年下で明徳義塾高校、東北福祉大学と同じ道を歩んだ後輩。卒業後は選手としてPGAツアーチャイナなどにも出場した。2019年から専属キャディを務める。

アジアアマ優勝、アマチュアでのマスターズ出場と先輩・松山英樹と同じ道を歩んでいる金谷拓実は「ゴルフの試合を見て初めて泣きましたし、感動しました。でも、『グリーンジャケットを常に持ち歩こうと思います』と言っていたのは、ちょっとかわいいなと思いました(笑)怒られるかな」とコメント。

目澤秀憲
めざわ・ひでのり/1991年2月17日生まれ。日大ゴルフ部出身で、卒業後は渡米してTPIレベル3を取得。その後は河本結、有村智恵などのコーチとなり、2021年から松山英樹とコーチ契約。

2019年、2020年と2年連続でマスターズに出場していた今平は、松山の技術レベルを絶賛。「優勝はものすごいことだと思います。松山選手はPGAツアーのトップ選手と比べてもアイアンの精度と高さは上だと思います」と称賛。

松山英樹が優勝するまで、マスターズでの日本人最高となる4位の記録を持っていた片山は「すごい!の一言では失礼ですけど、85年、誰も打ち破れなかった壁を打ち破った。生きているうちに日本人の優勝が見れたという、何とも言えない感覚」と語った。

ドライバーも安定していましたし、アイアンの精度もPGAツアーのトップレベルで、今年はパッティングも良かったですが、勝ちきれた要因はアプローチだと思います。
私も丸山茂樹選手の専属コーチとしてオーガスタに行きましたが、オーガスタは12番、15番、18番とか「絶対に寄らないアプローチ」っていうポイントがいくつかあるんです。今年の松山選手は、そこからでも寄せていました。
象徴的だったのは3日目の18番。2打目を奥に打ち込んでしまって、下り傾斜から高速グリーンを狙うアプローチが残りましたが、松山選手はここから寄せてパーセーブした。そのパーによって、3日目は1イーグル5バーディの「65」が出て最終日につながった。もし、あの神業的なアプローチがなくて18番がボギーとかダブルボギーだと、最終日の展開も変わってきたと思います。
最終日も15番で池に落とした後のアプローチはすごく難易度が高いのですが、慎重に手前に寄せてボギーでおさめた。

4日間を通してパターも入っていましたが、それはパターが入る距離までアプローチやバンカーショットをしっかり寄せていたからです。

松山英樹と同学年の石川遼は「すごいなという気持ちとともに“やる感じ”はありました。よく、“彼にできるなら自分にもできる”という言葉がありますが、英樹にできて自分にできないこともある。それを補ってスコアを作るのがゴルフの面白さ。すごく刺激になりました」と語った。

●解説内藤雄士
2001年には日本人初となるツアープロコーチとしてマスターズ、全米オープン、全米プロを経験。丸山茂樹の専属コーチとしてPGAツアー3勝に貢献。

シャウフェレが1打目をミスして左の池に。松山はグリーン右から攻めるも3パットのボギー。

今大会はコロナの影響もあって、現地解説には行けませんでしたが、テレビで見ていた私も泣きました。今まで、現地で何度も悔しい思いをしていた松山選手を見ていましたからね。
2011年の頃から松山選手を見ていると、元々フェードヒッターだったのが、ここ2、3年はドローボールをよく打っていた。それが今年は本来のフェードボールで上手く攻めていたと思いました。最近のマスターズを振り返ると、松山選手は“置きにいくティショット”でミスが出る場面が多かったですが、今年は置きにいったショットがほぼ完璧にフェアウェイを捉えていました。一方で、イーグルやバーディを狙えるパー5ではしっかり強振して強いボールも打っていた。そんなドライバーの強弱を上手く使い分けることで、3日目にはスコアを一気に伸ばして、4日目には我慢のゴルフができたと思います。
特に“置きにいくティショット”の技術を感じたのが最終日の17番と18番。15番で池に入れて、16番もボギー。2位と2打差に迫った状況で、17番も18番もドライバーで打ったティショットをフェアウェイにキープした。その精度が優勝につながったと思います。

4日間で何度かピンチはあっても、決して無謀なショットは打たず、クレバーなコース攻略で一度もダブルボギーを叩かなかった松山英樹。29歳にして10度目のマスターズ出場の経験が、最終日に猛追をみせたザンダー・シャウフェレやウィル・ザラトリスとの差だったのかもしれない。
過去のマスターズを振り返るとドライバーを曲げるシーンが目立った2019年、パッティングに苦しんだ2017年などもあったが、今年はティショットからショートゲームまで全ての課題をクリアしていた。試合展開でも初日に「80」を叩いて予選落ちした2014年や、最終日を3位タイで迎えるもスコアを落とした2016年もあったが、今年はその経験を生かして伸ばすところは伸ばして、耐えるべきところは耐えていた。今までの日本人選手は20代後半でマスターズに初出場する選手が多かったが、松山は29歳で10度目。若くして経験を重ねたことが日本人初の栄冠につながったのかもしれない。